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医者は理系か文系か

医者は理系か文系かという疑問があるかもしれませんが、一般に医者は理系とされています。なぜ医者が理系なのかについて考えてみます。

人体は物質でできており、物理、化学、生物学の法則に従います。また、人体に影響を与える薬、化学物質、治療機器、診断機器なども、物理、化学、生物学等の法則に従っています。

病院に行けば、薬だけではなく、様々な治療機器、診断機器、器具、化学物質などが使われており、理系の諸学問が医学に大きく貢献していることが分かります。

また、医学は、物理学、化学、生物学の発展の影響を受けます。たとえば、物理学がなければ、X線CT、核磁気共鳴画像法(MRI)、放射線療法などは生まれないでしょう。化学がなければ、各種の治療法は生まれませんし、そもそも人体における薬物の代謝の仕組みも解明できません。

このように、科学技術全体と、医療とは密接に結びついているということができるでしょう。

医者が、科学技術の諸分野の成果を、医療の現場に積極的に取り込んでいくことが、人命救助につながるのではないでしょうか。

科学技術の発展と人命救助

科学技術の発展よりも文化の発展の方が人命を救助するという意見もあります。しかし、本当にそうでしょうか。

科学技術の発展は、多くの人命を救助してきました。

アフリカの文化が他の地域の文化より遅れているとは必ずしもいえないでしょう。しかし、アフリカの科学技術は遅れています。

日本の江戸時代の文化が、当時の西洋の文化より劣っていたとは必ずしもいえないでしょう。しかし、日本の江戸時代の科学技術は遅れています。

日本の江戸時代の平均寿命は20歳台のようです。

たとえ優れた文化を持っていても、科学技術の発展度合いが低ければ、人命は失われます。人間の体が物質で出来ている限り、科学技術の人命救助における役割は大きいと思われます。

平安時代の文化が、現在の文化より劣っていたとは必ずしもいえないでしょう。しかし、平安時代の平均寿命は、10歳台のようです。

優雅に人々が暮らしていたなどというイメージは必ずしも正しくはないでしょう。生まれた子の多くは成人前に死に、成人後も疫病、飢饉などで人々は死んでいったのです。

科学技術関連人材による人命救助

科学技術関連人材による人命救助は、理系の地位を向上させる一つの動機になるであろう(http://rikoukei.com/douki.html)。

理系の中で、医師の地位が高いのは、人命救助の観点から、医師の地位を高くするという社会的コンセンサスがあるからと思われる。

医師の地位向上は、優秀な人材を医師に集め、それが人命救助の確率を高める。すなわち、医師の地位向上により、人命救助がなされる。

問題は、医師以外の理系の地位を高くすることが人命救助にとって効果的なのかである。

医学は、人類の科学技術の体系と無関係に存在するわけではない。医学の進歩は、理学、工学、薬学、農学など色々な科学技術の分野に支えられている。

優秀な人材を理系に集めることが、科学技術の発展による人命救助にどの程度有効であるかは、研究課題となるだろう。

300年程度の時間規模で見ると、科学技術の発展を抑圧した社会は人命救助の点からかなり不利になるだろう。

たとえば、江戸幕府が現在でも続いていたら、今でも多くの人が疫病や飢饉におびえなければならないかもしれない。

江戸時代の平均寿命は、20歳台といわれている。現在であれば救える命も、江戸時代では救うだけの科学技術力がない。

江戸幕府が医者だけを優遇し、士農工商で、技術者を冷遇した場合、丸薬の作り方は進歩しても、電子顕微鏡やX線CTなどは生まれない。

医者だけではなく、幅広い科学技術分野の人材の地位を向上させることが、長期的には人命救助となるのではないだろうか。

この点についてはさらに研究を進めていく必要があるだろう。
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