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難病と理工系

筋肉が骨になる病気(FOP)の話をテレビで見た。難病の人が議員に働きかけて、難病認定がなされたということである。それにより研究が進むそうである。すばらしいことである。

あまり認識されていないかもしれないが、理工系こそが医学の進歩の鍵を握っている。理工系の地位向上運動は、科学技術水準を全体的に引き上げ、ひいては難病の人を救うことになる。科学技術の進歩により、人類の科学技術水準を平素から上げておくことが、難病の人を救うことになるのである。

FOPの場合、原因となる遺伝子が特定されたそうであるが、これは遺伝子工学の進歩による。難病の研究は難病の研究だけではなしえない。基礎的な研究の積み重ねの上に、難病の研究がある。

そして、遺伝子工学の発展は、化学分析技術、コンピュータ技術の発展に支えられており、それらは材料技術、電子技術など数多くの理工系の科学技術に支えられている。平素から全科学技術分野にわたって、科学技術の振興が重要である。

医学だけではなく、全科学技術分野が医療に関係しうることは、以下の記事でも述べた。

ゲノム創薬と分子標的薬

理工系の地位向上運動の目的

理系の地位向上運動は、科学技術の進歩のためのものである。

科学技術の進歩をよいことと考えるか悪いことと考えるのかは、人それぞれであろう。価値観は人によって違う。

しかし、仮に科学技術の進歩を肯定する場合、次に「科学技術の進歩を促進させるためには、理系の地位を上げる方がよいか下げる方がよいか」という命題の答を出さなければならない。

これは、検証可能な命題である。少なくとも理系離れが生じてしまうのであれば、科学技術の進歩を阻害することは自明であろう。

日本は、科学技術立国を採っている。国としては科学技術の進歩を肯定する立場である。金融立国、資源立国、農業立国、観光立国など他の有力な手段があれば、日本が科学技術立国を捨て去ることができるかもしれないが、日本が科学技術立国を捨てられるほどの代替案は今のところ示されていない。

日本は科学技術立国を推進しているのに、理系離れが生じているのである。これは深刻な矛盾ではないだろうか。

理工系の地位向上運動の目的は、科学技術の進歩にある。自分の地位を上げてほしいというだけの私利私欲の運動ではないのである。

リニアモーターカーと理工系

リニアモーターカーは理工系の技術の結晶である。

鉄道技術は、アメリカが鉄道を重視していないので、日本、フランス、ドイツ等が支えている。人類に対する責務を日本は負っているのである。

その意味で、リニアモーターカーは、世界の鉄道技術の観点から重要である。営業運転には色々な考慮が必要であろうが、少なくとも研究開発への多大の資金投入は怠ってはならないであろう。

営業運転にあたっても、リニアモーターカーが実現することが鉄道技術の進歩に与えるプラス面を計上して考えるべきであろう。リニアモーターカーの技術者、研究者の士気を上げていくことが重要である。

魚の養殖の技術

魚の養殖の技術は大きな可能性を持っている。

養殖については、コストを削減するために狭い生け簀にたくさんの魚を入れたり、抗生物質を過度に使うなどの方向ではなく、魚をできる限りよい環境で飼育し、高級品として出荷する方向が望ましいだろう。

高い技術者倫理に基づいて、科学技術の力を結集して天然を超える良好な環境を作り出し、天然物を超える付加価値を生み出すことが重要だろう。

天然物が高いから魚をあたかも工業製品のように大量生産して安いものを提供するのではなく、技術者倫理の観点を考える必要があるだろう。

漁業関係の技術者、技能者が、誇りと高い技術者倫理を持って仕事をすることが、漁業関係の技術者、技能者の地位向上につながるであろう。

女性差別と理系差別

女性差別という言葉はあるが、理系差別という言葉はあまり聞かない。

これは、理系は多くの場合自らの選択によるものであり、待遇が悪ければ離れることができるからである。理系差別ではなく、理系離れが起こってしまうのである。

逆に、女性離れという言葉はあまり聞かない。女性は生まれつきであり、自らの選択でなるものではないし、女性離れは困難である。

よって、女性の場合には「女性差別」の問題になり、理系の場合には「理系離れ」の問題となることが多い。

なお、男性差別や文系離れの問題もある。女性差別について男性に聞けば、女性は優遇されている面もあると答えるだろう。理系離れについて文系に聞けば、理系は優遇されている面もあると答えるだろう。女性の多くや、理系の多くも、同様に答えるかもしれない。実際に、それが事実であろう。

女性は、社会から色々な面で保護を受けやすい。幸せに暮らしている女性は、女性の方が恵まれているというだろう。

理系は、人間関係など面倒なことを避けて技術や研究に集中しやすい。幸せに暮らしている理系は、理系の方が恵まれているというだろう。

これらは、物事の一筋縄ではいかない複雑性を意味している。

しかし、それでも、相対的に見れば、女性差別、理系離れは、男性差別、文系離れより深刻であるといえるだろう。

社会には、男性差別も数多く存在するが、相対的には、女性差別の方が男性差別よりも社会問題になっている。

また、社会には、理系の方が優遇されている点も数多く存在するが、相対的には、理系離れの方が文系離れよりも社会問題となっている。

特に、昇進等に焦点を当てれば、女性差別や文理格差は歴然と存在する。

そこで、一部の女性は、女性差別の撤廃を訴える。
また、一部の理系は、理系の地位向上を訴える。

しかし、大部分の女性や、大部分の理系は、そういう運動も一理はあると思いつつも、積極的には動かない。

満足している女性や理系も多いため、運動自体に意義を感じない場合もある。そして、大多数の女性や理系は、多少の不満を持っているが、積極的に動くほどではないと考えるのである。

その結果、女性は人口の約半数を占め、理系も相当数を占めるが、その割には地位向上がなされていないのである。

このように、女性の地位向上も、理系の地位向上も、似ている面がある。

環境問題と理工系

科学技術の進歩は、環境問題の解決に重要である。

科学技術の進歩を敵視する者は、環境問題は科学技術により引き起こされたと主張する。そして、科学技術の進歩を止めることこそ、環境問題の解決であると主張する。

しかし、科学技術の進歩を敵視するのは正しい態度ではないのではないだろうか。原始的な暮らしに戻ることは現実的ではない。

そもそも、科学技術の進歩こそが、環境問題を突き止めたのである。たとえば、公害は、科学者によるメカニズムの研究なしには食い止められない。

科学技術の進歩が、環境問題の解決につながる。これは、科学技術が進歩した国と、そうでない国で、いずれが環境問題が深刻かを考えれば分かるであろう。

日本は、環境問題を解決する環境技術により世界に貢献しなければならない。環境問題の解決に向けて、科学技術を進歩させるべきであろう。

理工系の地位向上が重要となるゆえんである。
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